20080604

聖地 目玉 ガスコンロ


ポルトガルの形を面長な男性の横顔に見立てるとするなら、聖地ファティマはちょうど目玉のあたりに位置している。リスボンからはバスで1時間半もあれば到着する。そのリスボンはだいたい鼻の穴あたりにある。素敵なビーチに行きたければ口ひげの周りがおすすめだ。
1917年に起きた聖母出現の奇跡は、実に10万人の目の前で起きてヨーロッパ中にファティマの名前を知らしめた。奇跡から100年と経っていないファティマは聖地としてはまだ若いけれど、奇跡の現場でマリア像が祀られている出現の礼拝堂は巡礼者で溢れかえっていた。巡礼者たちは神父の説教を涙を流しながら聞いている。礼拝堂の外を祈りながらひざまずいてゆっくりと周っている人もいる。
中心地には町で最も古いネオクラシック様式のバジリカと、ギリシャの建築家アレクサンドロス・トンバージス設計の町で最も新しいサンティッシマ・トリンダーデ教会が向かい合って建っている。間に挟まれた広場はスノーボードのハーフ・パイプコースみたいに弧を描いて真ん中がへこんでいて、毎年5月と10月に開かれる大祭には10万の巡礼者をしっかりと受けとめる。
新しい教会はガスコンロのつまみみたいに、正円のボリュームに2枚の壁が刺さったような平面をしている。2枚の壁は二つの教会を結ぶ軸線の上にあって、壁に挟まれた教会の入り口からは向かいに建つバジリカしか見えない。極端に単純な形と極端に強調された軸線が実に上手く機能している。他にも扉のデザインや巨大な十字架のモニュメントなど、いろんな形でアーティストや建築家がこの教会に参加している。建築家アルヴァロ・シザがこの教会のためにデザインしたタイルには一見の価値がある。
新しい聖地の、新しい教会は、それより少しだけ古い教会に負けない存在感を持っていた。

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