20080609

友人 コーヒー 嘘


リスボンで暮らし始めて、とにかく僕はコーヒーをよく飲むようになった。
ポルトガルでコーヒーと言えばエスプレッソのことだ。イタリアのエスプレッソより少し薄くて、フランスのエスプレッソより少し濃い。そんなポルトガルのエスプレッソを僕は大体一日に二杯は飲んでいる。出勤して働き始める直前に砂糖をたっぷり入れた目覚めの一杯を飲む。昼食から帰ってきてやっぱり働き始める直前に口直しの一杯を今度は砂糖少なめで飲む。夕食を外で済ませてしまった日にはもう一杯飲むこともある。
ポルトガル人が自信を持って勧めてくるだけあって、とにかく旨い。風味は濃厚で口に含むと香りが鼻から抜けていき、コクのある苦味と砂糖の甘みが広がっていく。砂糖の量は好みにも寄るのだけれど、ほとんどの人が袋一つ(8~9グラム)を全て入れてしまう。砂糖をたっぷりと入れた濃厚なエスプレッソは極上のチョコレートにも例えられる。特に旨いレストランで旨い食事の後に飲むエスプレッソはなかなかに至高の一時を与えてくれる。
豆は多くの場合ロブスト種とアラビコ種の2種類が使われている。「robustoが輪郭(body)をつくって、arabicoが風味(flavor)を加えるんだ」と友人のヌノは教えてくれた。実際は皆豆にはそれほどこだわっていないと思うけれど。
僕の中でのコーヒー観はこの短い期間に全く変わってしまったと言っていい。簡単に言うと、エスプレッソとドリップ・コーヒーは違う飲み物なのだ。エスプレッソは濃いドリップ・コーヒーではないし、逆にドリップ・コーヒーは薄いエスプレッソではないということだ。ちなみに本当にエスプレッソをお湯で薄めて作るコーヒーをこちらではカフェ・アメリカーノという。
そういえば近々「スターバックス・カフェ」がリスボンに進出するという嘘みたいな噂がある。慣れ親しんだエスプレッソとの共存が危ぶまれているけれど、甘いものと新しいものに目が無いポルトガルの人たちのことだから意外とすんなりと受け入れてしまうかもしれない。

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