20080613

祭 鰯 いわし


毎年6月13日は街の守護聖人サント・アントニオを讃えるために祭りが開かれ、その日はポルトガルでもリスボンだけが休日になる。12日の夜には前夜祭が開かれて、街は明け方近くまで文字通り大騒ぎし続ける。この老若男女を問わない大騒ぎがこの祭りのピークともいえる。
「リスボンにこんなに人が住んでいたのか」と思わせる程の人が日本の通勤ラッシュみたいに道を埋め尽くす。横丁にはテーブルがはみ出してきてもはや道なのか食堂なのか区別がつかない。街に無数にある階段はこの夜ばかりは椅子になりベッドになる。ベランダにターンテーブルとスピーカーを出してくれば、窓の下は即興でダンスフロアーになる。体が自然とリズムを刻み始め、街全体が音楽と歌と踊りで溢れていく。
祭りの間は、鰯を食べ赤ワインを飲むのが慣わしになっている。この祭りがいわし祭りと呼ばれる所以だ。路上の至る所で人々が汗だくになりながら鰯を炭火で焼いている。僕は鰯を丸ごと一尾パンに挟んでいわしバーガーを作り、ピリ辛いスパイスをかけて丸ごと頭から食べ、プラスチック・カップに注がれたビールを飲んだ。脂ののった鰯の焼ける香ばしい匂いと白い煙が、Tシャツと石造りの街並みに染み込んでいった。
リスボンっ子達は声をそろえて「Cheira Bem, cheira a Lisboa(いい匂い!リスボンの匂い!)」と歌う。匂いも味も音も靴底にあたる石畳の感触も、五感全てを使ってリスボンを堪能した夜だった。

2 comments:

Yasuto said...

今日、その鰯祭りに想いを馳せながら東京、高円寺のポルトガルレストランで、鰯祭りをやります。良かったらぜひ。
というか、すげーよな。鰯祭り。去年はアルファマからアダマシュトールそして、バイロ、ビカをグルグルしてどうなったか覚えておりません。

Yusuke OONO said...

>ヤストくん
すげーよ鰯祭り。事前に事務所の女の子に結局何するお祭りなのってきいたら「食べて、飲んで、歩くのよ!」って言ってた。酔っ払いながらすんごい歩くよね。お祭りのときの練り歩きの文化は万国共通なのかもね。
日本に帰ったらポルトガルレストラン連れて行ってくださいな。