20080703

雑談 複合施設 反転


バターリャに接しているレイリアは、ちょうどリスボンとポルトの中間に位置していて昔から交通の要衝として栄えている。レイリアの街にはムーア人が手がけたレイリア城と、ポルトガル建築界の異才トマス・タヴェイラが手がけたスタジアム、そして事務所が手がけた集合住宅と商業施設のコンプレックスがある。僕はバターリャからタクシーで足を伸ばしてレイリアを訪れてきた。
日本人を珍しがる運転手と雑談をしながら北上する。レイリアには20分ほどで到着し、僕は街で一番大きそうな広場でタクシーを降りた。丘の上からレイリア城が静かにこちらを見下ろしている。事務所の作品であるコンプレックスは城を背景にして広場に面した小さな敷地に建っている。集合住宅とレストランと映画館とNIKEとZARAが入った複合施設は思ったほど大きくはなかった。
既存の建物に連続するように新築部分のヴォリュームが付け加えられている。外からみると面的な要素でパキパキと構成された新築部分とマッシブな既存部分の対比が目立つのだけれど、地上階の内部空間で両者は繋がっている。新築部分の周りにはサンクンガーデンが掘られていて、地上部分とスロープを使って連続的に繋がっている。絡み合う動線を巧みに処理して、ちゃんと意匠にまで高めているのはさすがだ。
でもやはり既存と新築の関係が際立っている。新築部分のエントランスはコンクリート・スラブの屋根に覆われた小さな広場になっている。既存のヴォリュームをそのまま延長するのではなくて、屋根だけを延長することで認識される空間だけを延長している。黒く塗られた既存部の壁を境にして古いものと新しいもの、虚と実が反転しているみたいで面白い。
この作品は作品集や事務所のポートフォリオの中でも扱いが小さくて実はあまり知られていないのだけれど、何も知らずに訪れたとしても確実に印象に残るであろう隠れた名作。

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