20080706

甚平 剣道着 HANDROLL SUSHI


もはやスシ・パーティーの開催は海外に来た日本人なら必ず一度は経験するものといってもいいのかもしれない。

ヨーロッパやアメリカにおいて寿司は今や高級ディナーの地位を確固たるものにしている。中国系のエセスシ・バーがそこら中に溢れているのも、その人気の高さゆえのことだ。そんな寿司をタダで食べ放題というのだから、スシ・パーティーの需要はいわずもがなというわけだ。ドイツにいた頃と比べると随分有名になったものだ。
そんなわけで僕は研修も終わりに近づいた今月の初め、事務所のスタッフを自宅に招いて念願のスシ・パーティーをシキさんと開催した。半年経つまでパーティーを開けなかったのは、適当な広さを持った場所が見つからなかったからだ。結局、僕の家具を全部シキさんの部屋に移動してバルコニーを全面開放するということで自宅を使う覚悟を決めたのだけれど。
にぎり寿司は手間がかかるし面白みに欠けるということで、今回はビュッフェ・スタイルで手巻き寿司をすることにした。何人来るのか見当もつかなかったけれど、結局当日には十五人強のスタッフやその家族が次々に家にやってきた。甚平と剣道着を着た二人の日本人が彼らを出迎える。ネットで見つけた動画(2)を見せながら簡単に手巻き寿司のレクチャーをすると、彼らは新鮮な鮭や鮪、鰯、鯛、玉子、シーチキン(2)を慣れない手つきでアボカドやキュウリと一緒に酢飯をのせた海苔で巻いて次々口の中に放り込んでいった。
大鍋で作ったかぶらの味噌汁も出汁がきいていて旨かったし、輸入食材店で買ってきた油揚げを使った稲荷寿司も即席の割りに良くできていた。皆が持ってきた差し入れの白ワインとビールで冷蔵庫はすぐに一杯になり、その酒も次々に空になっていく。外から入ってくる風が涼しくて心地良かった。
今回一番驚いたのは、3番目くらいに到着したゲストがあまりこういったホーム・パーティーに参加したという話を聞かないうちのボスだったことだ。玄関のドアを開けるなり「Olá!」と言うカヒーリョの声と姿が飛び込んできたので、僕は面食らってしまって彼のことを上から下まで確認してしまったほどだ。彼はこの日のためにわざわざカスカイスにあるポルトガルで一番美味しいジェラテリア「サンティーニ」(3)でジェラートを買って来てくれていた。翌日事務所では早速話題になっていて、パーティーに来なかった他のスタッフから「カヒーリョが来たんだって?」と聞かれたりもした。
おそらく僕はこの夜研修期間で一番彼とじっくり話をすることが出来たと思う。すぐに帰るだろうと思っていた彼も、気付けば夜の2時過ぎまで残っていた。全員が帰った後、テーブルの上の大量の空のワイン・ボトルとビール瓶を片付けながら、僕はシキさんとパーティーの成功を噛み締めていた。

(1)ネットで見つけた動画: How to make Hand Roll Sushi
(2)鮨ねた: 結果的に言うと、一番人気は鮭で一番不人気は鰯だった。鰯は小骨が気になるのが原因と思われる。鮪は日本のものとは品種が違うためか色がドス黒いのであまり食欲はそそらない。
(3)SANTINI: 親子6代に渡る老舗アイスクリーム屋。毎日その日の分量だけを予想して作っている。ヨーロッパ諸国から要人がこの味を求めてやってくるという。http://www.geladosantini.com/

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