20080229

あんこ ひよ子 世界一おいしいチョコレートケーキ


研修を始めてまもなく、僕はリスボンで誕生日を迎えた。ポルトガルに限ったことではないけれど、誕生日は日本のそれよりもずっと大事にされている。男同士はこれからの一年の友情を確かめ合うような堅い握手を交わし、男女は両頬に優しくキスをする。事務所では誕生日を迎えると自分でケーキなどを持っていって皆に振舞うことになっている。それは研修生も例外ではない。所員の誕生日はパソコンの共有カレンダーで確認することができるから、誕生日を忘れられたりすることもない。
持参するケーキやシャンパンの選択は重要だ。旅行先で土産を買う時と同種のセンスを問われる。ましてや僕の場合、日本人というだけでハードルが上がる。彼らは勝手に僕が日本の和菓子を空輸することを決め付けているようだった。事前情報によると、あんこはあまり評判が良くないらしい。僕は散々迷った挙句、東京の菓子として定着している福岡の菓子「ひよ子」を30羽ほど日本から呼び寄せ、皆がポルトガル語のハッピーバースデーを歌い終わるのと同時に、パーティー会場と呼ぶには少し華やかさの足りないミーティングルームに解き放った。エスプレッソの代わりに玄米茶、ほうじ茶、麦茶を飲みながら、彼らは美味いのか不味いのか判断しかねるといった表情でひよ子をかじっていた。

ちなみに事務所での一番人気は「世界一おいしいチョコレートケーキ」という名前のチョコレートケーキで、最近では3人続けて同じケーキを持ってきたりするものだから、これを持ってくると「想像力不足だ」と酷評されることになる。食べると喉が焼ける程甘い。

2 comments:

Anonymous said...

(・e・)(・e・)(・e・)

世界一おいしいのに喉が焼ける程甘いのはすごいね(笑)

Yusuke OONO said...

>crescens
スポンジケーキの代わりに、砂糖菓子の上に激甘チョコレートソース(クリームじゃないよ、ソースだよ)がかかってる。人、殺せます。