20080309

日帰り旅行 1755年の大地震 ロボット兵 


リスボンからの小旅行といえば、ポルトガルを旅行したことのある人ならユーラシア大陸最西端のロカ岬や、その道中の世界遺産の街シントラを真っ先に思い浮かべるだろう。もちろん、行く価値は十分にあるのだけれど、同じくらいの時間をかけた日帰り旅行なら、もっとお勧めしたい場所がある。
バスターミナルでチケットを買って長距離バスに乗り込む。眩しい朝日に向かって進路を取り、内陸部へと入っていく。一時間半も経てば旅の目的地モンテモール・オ・ノヴォに到着する。天正少年使節団も訪れたというこの街は、丘を中心として大樹に寄り添う影のように麓に広がっている。
旧市街を抜け、丘の上に登る。頂上には、1755年の大地震で崩壊した城の骸が、砂浜で一晩風雨にさらされてしまった力作のように立っている。丘の頂上、崩れた城壁に囲まれた大地では小さな花が咲き乱れ、遥か下界には360度のパノラマでアレンテージョの湿り気を含んだ景色が霞みながら広がっていく。すぐ隣にロボット兵が歩いていて、パズーとシータが見張り台の凧を係留しているような世界といえば分かりやすい。
多少命を懸けて、城壁の一部の狭い足場をたどって先端まで進めば、非現実的な遠近感とスケール感で下界が広がる。地球の歩き方にも、ロンリープラネットにも載っていない街で、僕は少しだけムスカ大佐の気持ちを味わった。

No comments: