20080303

ヴィラモウラ 海岸線 環境の足跡

働き始めて間もない頃は、模型や図面の手伝いなどを通して、仕事の進め方や事務所の雰囲気に慣れることに重点を置いていた。

しばらくしてプロジェクトを四つほど手伝い終え(そのうちの一つは僕が手伝っている間にポシャッてしまったのだけれど)、こちらも向こうも慣れてきたというのもあって、所員の人と2人でポルトガル南部アルガルヴ地方の港町、ヴィラモウラのリゾート開発のプロジェクトをやらせてもらえることになった。3月末提出。

移動時間が滞在時間の倍というスケジュールで、ポルトガルの南端にある敷地へ日帰り小旅行。潮の匂いがゆらゆらと漂う敷地周辺をしばらく見て回る。プログラムにマリーナや船の修理工場などを含んでいるので、許可を取って停船場を見学させてもらう。

聞けば、こういったリゾート開発の仕事は年々増えてきているという。自然の多く残るポルトガルには、昔からドイツやイギリスから観光客が訪れていた。彼らが落としていく金はポルトガルの貴重な資本となっていることは確かだ。しかし近年の、特に沿岸部の開発には節操が無い(1)。違法建築・砂丘の破壊・無許可の砂採取などによって、海岸線の80%がすでに何らかの形で人の手によって荒らされている。

ポルトガルの設計事務所(若手、大御所問わず)で、こういった仕事に関わっていない事務所の方が少ないのではないか。まだカヒーリョは仕事を選んでいる方だと言うが、それでも都市計画規模の開発をしているプロジェクトもある。シザ事務所アイレス・マテウス事務所との合同プロジェクトもある。

いつか国全体が後悔する時が訪れたときには、全てが手遅れになっている。そしてその時はいずれ訪れる。2人でコンペを任される喜びと期待の一方で、無計画に資源を浪費することにこれといった疑問も持たない一部のポルトガル人に、ぬかに釘を刺すような虚しさを覚えた。


(1)節操無い開発 :環境団体のQuercus(ケルカス)は、「環境の足跡」という指標を発表した。一人当たりの資源消費量を賄うに、どれだけの土地と水が必要なのかを示している。同団体の調査によると、ポルトガルにおいては、この値は一人当たり5.2ヘクタールであった。世界の平均は1.8ヘクタールで、この事実からもポルトガルが資源を無駄使いしている悲しい現実を知る。

2 comments:

匿@匿 said...

ヴィラ・モウラ・・懐かしいなあ。ゴルフ場が2つあるリゾートだった。ファロの空港からヴィラ・モウラのあたりには他にも Quinta di Lago (湖の城), Val de Robo (狼の谷)なんて名門コースがあったと思う。

やはり空港から近い便利なほうから開発が西進していくのか・・・当時、Albfeira de Pera あたりまで開発が進んでいた。概ねゴルフコース+アラブ風煙突のある別荘・・というパターンだったけど。

でもLagosあたりまで来ると鄙びてきて、そこからSagresまでは明るく貧しい(*)正しいポルトガルの田舎の姿・・という感じだったけどなあ。今はあの辺まで開発が進んでしまっているんだろうか?

しかし、あそこの開発に貴君が関わるとは夢にも思わなかったなあ・・・20年前に行っているんだぜ・・・覚えてる?

(*)暗くて貧しいのは東欧の田舎・・・光の燦々と降り注ぐポルトガルの田舎は妙に貧乏臭さがない。同じように壁のはげかかった傷んだ家屋を見ても、東欧だと哀れを催すのにね

Yusuke OONO said...

>匿@匿
うろ覚えだけどね。覚えてるよ。
僕もまさかあの時泊まっていたバンガローとかの設計に携わることになるとは夢にも思って無かったよ。

あの頃のビデオとか、残っていますか?残っていたらちょっと見てみたいのだけれど。