20080310

ポウザーダ 油絵 ビー玉


ポルトガル独特のビルディングタイプに、Pousada(ポウザーダ)と呼ばれるものがある。修道院や教会、城などの歴史的建造物を宿泊施設にリノベーションしたもので、ポルトガル全土に40箇所以上ある。もともとは国営だったものが、現在では民営となっている。建築家が設計を担当しているものも多く、カヒーリョも一箇所、クラートという街で「Flor da Rosa」というポウザーダを手がけている。
新旧をどう関係付けるか、その手法が一つ一つ個性を持っているので、建築的観点からもとても面白く、どれも一見の価値がある。
モンテモール・オ・ノヴォからタクシーで20分程の距離にあるアライオロスという街にも、ポルトガル建築家が増築・改修を担当したポウザーダがある。お金と時間の問題で宿泊はしなかったが、たっぷりと時間をかけて見学をしてきた。いわゆる高層・高級ホテルのような敷居の高さはない。それでいてそこはかとない上品さと歴史の重みが、主張し過ぎることなく静かにたゆたっている。

建築家ジョセ・パウロ・ドス・サントスが増築と改修を担当したポウザーダ「Nossa Senhora da Assunção 」は回廊型の既存の修道院に客室棟のボリュームを新築している。

ポウザーダ建築の最初の見所はその配置計画にある。既存部にはほとんどの場合回廊があり、その回廊をどのように解釈するかによって動線の処理やプログラムの配置が異なってくる。面白いのが、回廊の持つ意味や動線計画が全く異なっていても、ほとんどのポウザーダにおいて、ボリュームの配置は余り変わらないという点だ。これは昔からの増改築のシステム(1)を暗黙の了解で建築家が受け入れているからであり、特に奇抜な配置をしなくても、新しい空間を作ることができるという彼らの自信の現われでもあるのだろう。
アライオロスのポウザーダでは、美しい交叉ヴォールトの回廊を含む既存棟の隣に、新築の客室棟を直線状に配置することで、既存と新築に囲まれた新しい中庭を生み出している。新築部のテラスからは、オリーブ畑が油絵の絵画のような密度で広がっている。
新旧は対比させるのではなく、素材や仕上げ、ボリュームのバランスを調整することでむしろお互いが一度溶け合い、その中のいたる所に現代的な表現がちりばめられ、浮き上がってくるような関係になっている。の素材の変化や天井と壁面の納まり。既存回廊を囲むガラスの納まりや、客室棟階段の手摺の石材の仕上げ方。それらの建築言語全てがある一貫した空気を持っていながら、全体像に溶け込んで統合されるのではなく、白い壁に嵌め込まれたビー玉のような存在感を示している。どこかカルロ・スカルパのカステルヴェッキオに通じるような、そんな印象を得た。

(1)昔からの増改築のシステム :回廊の増殖と、直線状にプランを延長していくシステムは、昔から変わらず使われていた。要はこれらをどう組み合わせるか。

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