20080317

Love Potion#9 アルファマ 津軽海峡冬景色


今年で結成六年目になる僕のバンドdominoplanから、メンバーのビンタンが遥々海を渡ってモロッコ・スペイン経由でリスボンを訪ねて来たのは先々週の木曜日のことだった。第一号。

僕らのバンドは楽器を使わない。無伴奏合唱、俗にアカペラと呼ばれていて、声や口から出す音を使って曲を奏でる。色とりどりの声色を重ねて、滲んで溶け合う水彩画のように歌を描いていく。dominoplanは女声一人男声五人の編成で、ほとんど日本人なインドネシア人のビンタンは主にリードボーカルを担当している。体全体を使って感情を表現する彼の歌声はポルトワインのように甘くて、屈託のない性格が現れているのか、素直でまっすぐな歌い方をする。

日本にいる間にスタジオで録音した音源が、時折事務所で面白がって流されるので、今やカヒーリョにまで彼の歌声は轟いている。同僚のゴンサロの現時点でのお気に入りはシナトラのTangerinだそうだ。ちなみに僕のお気に入りはサーチャーズのLove Potion no.9。
途中立ち寄ったセビーリャでは毎晩のようにフラメンコを聴いていたという彼のために、滞在最終日の夜、僕はポルトガルのファドを聴かせてあげたかったのだけれど、残念なことにほとんどの店で既に閉演。代わりにファド・バーの集まる城下の旧市街、アルファマ地区を夜中に散策することに。彼は歌同様に歩くことも好きなのだ。彼と一緒に歩くのは楽しい。些細な発見でも、一緒になって感動できる友達は貴重だ。興奮気味に、「ユウスケが何でリスボンを選んだのか分かったよ!」といってくれたのは嬉しかった。
アルファマのファド・バーと場末のスナックに共通する空気を見出したのか、街灯でオレンジ色に染る曲がりくねった路地を進むビンタンは、石川さゆりの津軽海峡冬景色を気持ち良さそうに歌っていた。

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