20080520

カッターの刃 古生代 勘違い


モンサントでの寝床の確保に失敗した僕らは、インフォメーションセンターのどこか頼りないお兄さんの進めもあって近くのペーニャ・ガルシアという村で一泊することにした。モンサントからタクシーで30分ほど進んだところにあるこれまた小さな村だ。
オープンしたばかりの、古い家を改装したホテルには僕ら一組しか泊まっていなかった。夜に到着したばかりで星はすごくきれいだったけれど、真っ暗で人気のない村に正直あまり期待はしていなかった。夜が明けて村を散策しているうちに、いい意味でその期待が外れたのだけれど。

ペーニャ・ガルシアはその村全体がモンサントと同じくエストレーラ山脈の山にへばりつくようにして広がっている。モンサントとは岩の種類が異なり、こちらは片岩。板状の岩が層になっている。村の建物はモンサントほど直接的ではないにしろ、この岩を手がかりにして建てられている。村を少し歩くと、巨大な片岩でできた谷が、それこそダイナミックに突然眼下に広がる。崖上の広場では、お洒落な帽子をかぶった地元のシニョールたちがのんびりと谷底を眺めている。よく見るとロッククライミングをしている人もいる。片岩のカッターの刃みたいに尖った危うくて険しい表情は、モンサントの丸みを帯びた花崗岩とは違った印象を差し出す。照りつける太陽が強烈な線状の陰影をつけて、その印象を強めている。
片岩は海の底で形成されることが多いらしく、ここ一帯が昔海だったことを示唆している。谷底に降りていくと、岩のいたるところに三葉虫の化石があるのはここが古生代の地層だということらしい。
谷底を一通り歩いた後、村に戻って僕は小さな食堂に入った。襲ってくる蜂から身を守りながら、テラスで生ハムとチーズとチョリソーの盛り合わせを黙々と食べた。期待通りにうまい。田舎に来るほどいい食材に出会えるものだ。
カフェで聞いた帰りのバスの時間通りにカフェで聞いたバス停みたいな場所で待っていると、もうバスは通り過ぎたという。どうやらカフェの主人が勘違いをしていたようだ。仕方がないので、僕らはタクシーを使ってカステロ・ブランコの駅まで戻ることにした。

こんな予定外のできごとは、こっちの感覚ではいたって予定内だけれど。

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