20080509

雑誌 禁煙 トレース


今週から僕はパブリケーションと呼ばれている仕事を手伝っている。建築雑誌に載せるための図面の作成やレイアウトが主な作業で、渉外以外の実務的な部分を任せてもらっている。ポルトガルでは学生時代にイラストレーターを使って作業することがほとんどないらしく、事務所内でまともに扱えるのが僕を含めて数人しかいない。そのせいもあってか、わりと重宝してもらっている。今月リスボンにカヒーリョが設計した新しい美術館、ムゼウ・ド・オリエンテがオープンするので、それに向けて雑誌などでいくつか特集が組まれるみたいだ。
僕は以前デザイナーのペドロが使っていた部屋を独り占めして、研修生のものよりも少し速いMacを使って久しぶりに英語版イラストレーターで作業をしている。コーディネーターのスザンナの部屋の隣にあるこの部屋にいると、彼女の吸う煙草(1)の煙のせいで一日の終わりには僕のTシャツはすっかりカラオケのソファみたいな匂いになる。事務所内はベランダ以外禁煙になったはずなのに、最近ではみんな堂々と部屋の中で煙をくゆらせている。まったくありえない話だ。
少し前まで立て続けにコンペに参加したおかげで随分と設計モードだったので、このパブリケーションの仕事は俯瞰的に事務所と関われる絶好の機会になっている。事務所の過去のプロジェクトや実際に動いているプロジェクトの図面を色々と見ることができるので、すごく楽しい。特に、雑誌に載せる際には既存の図面から線を間引いていくことになるのだけれど、これが勉強になる。ディテールをみながら、どの線が必要な線でどの線を消してよいのかを考えたり、既存の(修道院が多い)建物と増築部分との接合部分の納まりを見ながら線の太さを変えたりするのは、トレースをしているのと同じようなものだ。短期間にこれだけ多くのプロジェクトに関われるだけでも、この事務所に研修にきた価値を見出すことができる。もちろんそれだけではないけれど。
前にも書いたけれどやはりカヒーリョ事務所のプロジェクトは既存の建築と絡ませているものが特に面白いように思う。増築や改修の手法はまさに熟練されたものを感じさせる。「それだけアイデアを暖めているっていうことだよ」、シキさんは言った。この強みは、現代の建築界においてかなり重要なものだ。来週末にはべレンの宮殿内部にあるアーカイブセンター、夏にはポルトガル東部のクラートという街にあるポウザーダを訪れる予定。


(1)煙草: こちらの煙草の箱には、かなり大きな字で「Fumar Mata(喫煙は殺す)」と書かれている。そんな箱を持ちながら堂々と煙草を吸っている姿はある意味シュールでさえある。

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