20080523

ヴァスコ・ダ・ガマ 緊張感 CG


アレンテージョ地方の港町シネシュが大航海時代の英雄、ヴァスコ・ダ・ガマの生誕の地だということはあまり知られていない事実だ。この町の周りに、いかにも穴場という感じの美しいビーチが沢山あるのだけれど、地元ポルトガル人でもない限りなかなか行く機会はないだろう。
2005年、港町シネシュに建築家アイレス・マテウス兄弟設計の文化センターがオープンした。平日にしか入れない場所があるということで、セトゥーバルから更に足を伸ばして見学してきた。
標識を探しながら車がゆっくりとシネシュの旧市街を進む。特に詳細な住所は調べていかなかったのだけれど、町の中心にさしかかったあたりで明らかに周囲の建物と建ち方が違うヴォリュームを僕はすぐに見つけることができた。車を降りて近づくと、なるほど周囲の建物との距離感、既存の道との関係、佇まい、そのどれもが絶妙なバランスを保っていてカッコいい。少しでもバランスを崩すと一気に良さが失われてしまうような緊張感みたいなものがある。ポルトガルでは、周辺環境に対する条件が緩かったり甘かったりする敷地が多いので、こうした緊張感のある佇まいを出すことがとても難しいということは、こちらにきて随分と実感した。もともとの性格が大雑把だということも理由の一つとしてあるとは思うけれど。
この小さな町に対して大き過ぎるほどのヴォリュームは、その半分を地下に埋めることで見かけの大きさを町のスケールに合わせている。実物を見ているのにCGみたいに見えるのは、角の取り合いを限りなく「線」にすることができる石の仕上げならではの効果だ。手の届く高さまでの範囲で薄く貼られた石が、既にかなりの数割れていたり割られていたりしたのが少し残念だった。ざっくりとした内部空間は平日なのにがらんとしていて少し寂しかったけれど、積極的に環境と関わろうとするこの建築の姿勢に僕は好感をもった。
シネシュを離れた後、僕とヌノは近くのひなびたビーチに立ち寄った。そしてオープンデッキで夕日が落ちるまでゆっくりと時間をかけてビールをちびちび飲んでから帰路についた。

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