20080621

町興し サルタンの象 底力


一ヶ月くらい前。ポルトの建築事務所で働いている知り合いの方に誘われて、僕はポルト近くのサンタ・マリア・ダ・フェイラという小さな小さな村で毎年開かれているイマジナリウスというお祭りに参加してきた。毎年といっても昔からの伝統的なお祭りというものではなく、どちらかというと町興しを目的としたコンテンポラリーなアート・イベントに近いかもしれない。プログラムにはアルヴァロ・シザ、ソウト・モウラといったポルトで活躍している建築家を招いた講演会や、写真家スペンサー・チュニックの展覧会なども含まれていてかなり力の入ったものになっていた。
祭りの間は村のあちらこちらで同時多発的に幻想的なパフォーマンスが繰り広げられる。銀行の前では空中にレム・コールハースみたいな男が立っていたり、郵便局の壁にはプロジェクターで映像が投影されたりと、普段暮らしている村がその日ばかりは巨大な舞台装置になる。村の教会とその前の広場は演劇のステージになっている。ロープが張られた道路の上を人が飛んだり、一般の人にまぎれた演者が突然芝居に参加したりと、客席と舞台との境目がどんどん曖昧になっていく。
時間の関係で見ることができなかったのだけれど、どうやらロワイヤル・ド・リュクス(Royal de Luxe)が昼間に大道芸をしていたらしい。彼らはフランス・ナントの劇団で「サルタンの象」という演目の大道芸を行っていることで有名だ。10メートルはあろうかという巨大な女の子と象の操り人形が街に数日間滞在して観客や通行人と絡みながら物語を繰り広げる。大道芸の後をついていくうちに自分の住んでいる街がいつのまにかおとぎの世界に変わってしまうという仕掛けになっている。彼らは世界中色々な場所でパフォーマンスをしていて、今回ポルトガルではどんな演目を披露したのかは分からないけれど是非見てみたかった。
ヨーロッパではこんな風に街を「使った」パフォーマンスや祭が昔から広く認知されている。都市的なお祭りとでもいうのだろうか。都市的といっても街の規模はあまり関係ない。今回訪れたサンタ・マリア・ダ・フェイラみたいな本当に小さな村でもこんなにクオリティの高いイベントが行われていることに僕はポルトガルの底力を感じた。

No comments: