20080622

花崗岩の匂い 見本市 いぶし銀


ポルトを含めた北部の街の天気は変わりやすい。たとえ直前まで晴れていても、突然雨が降り始めたり牛乳みたいに濃い霧が辺りを包んだりすることがよく起こる。雨粒はひんやりと冷たくて、花崗岩でできた街並みに音もなく染み込んでいく。静かに雨を吸い込んで色の濃くなった花崗岩が北の街にはよく似合う。
北部の街出身の同僚ヴァシコは中々里帰りができていないせいか「ユウスケ、俺はリスボンに長くいすぎた。花崗岩の匂いが恋しいよ。」と嘆いていた。
ポルトから2時間ほど古ぼけた列車に揺られて北へ進む。ヴィーニョ・ヴェルデと造船業で栄えた街ヴィアナ・ド・カステロは、聖なる山サンタ・ルジアに見守られながら大西洋に流れ込むリマ川の河口に広がっている。
川沿いにはアルヴァロ・シザが設計したホワイト・コンクリートの図書館が建っている。隣の広場と役所関係の管理施設はフェルナンド・タヴォラによるものだ。現在ソウト・モウラの計画も進行中だったりと、ヴィアナ・ド・カステロの街はポルト派建築の見本市みたいな状況になっている。そんな中リスボン派のうちのボスもユースホステルを設計している。約10年前の作品。
ボリュームの構成や中庭を回るスロープやディテールなどは今のカヒーリョに通じるものがある。ぼんやりとした曇り空の中、コールテン鋼の塀や壁面の黒いアズレージョ・タイルや中庭を覆う緑色の芝生が小雨にしっとりと濡れてぎゅっと空気を凝縮している。おそらくポルトガル国内では最も北にあるプロジェクトは少し古くなっていたけれど、リスボンではあまり見ないカヒーリョの渋さが曇った空と雨の匂いによく合っていた。いぶし銀。

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